平成24年度 AFLA活動報告


1.バングラディシュ食道発声研修会の実施報告


平成24年8月、AFLAの活動として、バングラディシュに於いて食道発声研修会を実施いたしました。                                     
 ■ 実施場所:バングラディシュ ダッカ市内 ENT病院(Dhaka Medical College) 会議室
 ■ 開催期間:平成24年8月24日~9月1日
 ■ 研修目的:食道発声指導と指導員の養成

バングラディッシュ
バングラディッシュ

 ■ 参加者
  派遣講師 AFLA専務理事  松山 雅則
        〃  理  事  秋元 洋一
         〃 監  事     齊藤 康夫
  バングラディシュ医師Dr.モハメド他 26名
   通  訳 3名  会  員 延べ 145名
   同伴家族 延べ  54名

  ◆ バングラディシュの状況
   バングラディシュの平均的な国民一人当たりの生活費は1日2ドル(約180円)と言われていますが、国立病院の医療費は全て無料で手術も受けられます。
   喉摘者は、日々の生活に追われ、また発声指導を受ける機会もないため手術後は、専ら筆談に頼る生活になっているようです。
   唯一、今回会場となったENT病院代表教授でAFLAバングラディシュ会長のDr.モハメドが個人診療室の傍らで月1回の食道発声教室を開いているが、交通の不便さもあり毎回2~3人の参加者に留まっていて今後も改善の見込みは難しそうです。


 ◆ 研修内容
   初日に日本から持ち込んだ「食道発声初級から上級まで」の英文資料をDr.ルミに現地語で講義してもらいました。その後、全く声の出ない(初心クラス)、2音程度出る(初級クラス)、日常会話が出来る(上級クラス)に分けて練習を開始しました。
   全く声が出ない会員が多く先ずはお茶呑み法を教えるも、水を一旦口に含んで、ゴックンと一気に飲む動作が分からず、だらだらと飲む会員が多かったので、指導員の咽喉に会員の手を当て、実演で水を飲むコツを理解させると、上手くいきました。
   通訳は日本在住歴10年で日本語は理解し話せるが、医学用語・食道発声用語などに疎く会員に伝えるのに苦心しました。
   研修が終える頃には、全く声が出なかった会員のうち80パーセントがしっかり原音が出るようになり、2音、3音程度言えるようになった会員は14名になっていました。また簡単な会話が出来る者も8名になりました。
   僅かの研修期間に、大きな成果が見られた背景には、日頃生活に追われ練習機会がなかった会員が限られたこの機会を生かすべく泊まり込みで懸命に練習に明け暮れた結果だと思われます。
   この研修を主催されたバングラディシュAFLA会長のDr.モハメドが、開催中参加者の為にベッドや食事を提供するなどして多くの参加者を集めてくれた事に感謝いたします。


2.台湾食道発声研修会の実施報告
 
平成25年1月、台湾台北市内に於いてAFLA活動、食道発声研修会を実施いたしました。

   ■ 実施場所:台湾 台北市内 台北榮民總醫院(5階集会室、言語治療室、会議室)
   ■ 研修期間:平成25年1月12日~1月21日(9泊10日)
   ■ 研修目的:食道発声の普及に依る喉摘者の社会復帰のお手伝いと現地指導員候補の選出・養成

台湾
台湾

 ■ 参 加 者

  AFLA 会 長   安藤 増雄 

       監 事   齊藤 康夫

      〃   事務長  太田 時夫

   銀鈴会 理 事   川村 二三男
  台北医師  朱医師 他2名

  言語治療師    8名

   通   訳    5名

   会    員  延べ  153名 

    同伴家族  延べ   76名

◆ 台湾の状況
   台湾には現在食道発声教室というような発声練習の為の組織や会場がありません。
   喉頭摘出者のおよそ80パーセントがアピーナ(タピア)を使用しています。
   アピーナは、気管孔プロテクターの上から気管孔を押さえて話せるので着脱の手間がかからず、会員は胸のポケットに入れて持ち歩き、喋る時だけ取り出して使用し、またポケットにしまう動作を器用に繰り返して話していました。


 ◆ 研修内容
   研修第1日目は、34名の会員を初心・初級、中級、上級に分け朱医師の計らいで3つの部屋を使い練習しましたが、会員の多くがアピーナを日常的に使用しており、発声の際は肺の空気を使う習慣が身についているため、腹式呼吸法を覚えるのに各クラスともに手間取りました。
   会員は、やはりチューブを口にくわえるアピーナより見た目もよい食道発声に憧れが強く、非常に熱心に練習に取り組んでいました。
   期間中、初心・初級、中級各クラスで、上達が著しい会員数名を昇級させ会員相互の意欲を掻き立てながら練習に取り組んだ結果、初心者で全く声が出なかった20名のうち19名が発声に成功しました。
   開催中、言語治療師8名の先生方は、連日各教室に密着してビデオカメラを回しながら派遣指導員の指導方法を勉強されていました。
   また、本開催を主導された朱医師も、多忙な診察の合間を縫ってほぼ毎日のように会場に来られ練習を見守ってくださいました。
   最終日には、会員全員が練習の成果を皆の前で発表し、上級者は「さくら さくら」を合唱するなど 朱医師や言語治療師、家族から大きな拍手を頂きました。


   最後に、安藤会長より研修課程修了証が、各会員に授与され、我々派遣指導員には朱医師より感謝状を頂きました。
   全研修終了後、朱医師、安藤AFLA会長他2名の講師による「言語治療師勉強会」が催されました。参加者は講師4名、参加言語治療師80名、医師3名、派遣講師4名でした。
   講義は、朱医師により喉頭がん他の映像、摘出手術のオペ状況などのビデオを回しながらの克明な説明があり、続いて簫安穂先生より、発声のしくみ等の図解による説明がありました。
   最後に安藤AFLA会長により、食道発声の練習方法、指導のコツなど、実演を交えながらの講義が行われ、参加者は熱心に耳を傾けていました。
 

 

 会員の皆さま、賛助会員の皆さま、平素より公益社団法人銀鈴会の活動にご協力を賜り、誠にありがとうございます。長年にわたってご尽力のおかげであり、心より感謝申し上げます。

 今年度は、特に大規模な記念イベントの開催は予定しておりませんが、70年を振り返る大切な記録として「銀鈴会70周年記念誌」の刊行を予定しており、只今鋭意編集を進めております。7,8月の刊行を予定しています。

  70年前、銀鈴会は発声機能を失った方々の社会復帰と生活向上を支援するために東京大学病院医学博士であった高藤次夫(たかふじつぎお)先生が銀鈴会の初代会長となる重原勇治(しげはらゆうじ)氏を手術し、1954年(昭和29年)重原氏と共に喉摘者団体を、お寿司屋さんの2階に10人ほど集めて立ち上げたものです。それ以来、私たちの先輩方は多くの困難を乗り越えながら、前進してまいりました。先輩方の苦労と努力、そして会員の皆様の熱心な活動により、今日の銀鈴会があります。

この70年の歴史を振り返ると、多くの感動的な出来事や素晴らしい成果が思い出されます。発声教室の運営、各種イベントやコンテストの開催、会報「銀鈴」の発行など、会員、賛助会員の皆さまのご協力なしには成し得なかったことばかりです。

 さて、2025年度の主要な活動についてですが、今年も例年通り、6月の定期総会と声の祭典(日喉連東日本ブロック共催で今年はスピーチ大会です)を開催します。スピーチ大会は東日本ブロック11都県から予選で選ばれた代表が出場します。選手たちが日々の努力の成果を発表し、お互いに刺激的な貴重な機会となりますので、ぜひたくさんの方にご参加、ご参集をお願いしたいと思います。また、9月から10月にかけては日喉連東日本ブロック発声訓練士養成事業研修会を予定しています。これは訓練士の日々の勉強と交流を兼ねたもので、本年は銀鈴会の担当で東京で行われます。そして来年2月にはスピーチ発表会と家族座談会を開催します。

 銀鈴会の主たる目的である、日々の発声教室の充実にも引き続き頑張ってまいります。 特に、教室を卒業された方々には「声友クラブ」への参加をお願いしておりますが、参加が難しい方のために、より気軽に交流できるサロン的な場の開催を検討しております。OGOBを中心とした交流会のような場を考えているほか、長期的に教室を離れていた会員の方が教室に復帰しやすいような環境づくりにも取り組んでまいります。もちろん「声」のリハビリとしての役割も担えるような場所にしたいと考えております。さらに、本年は東日本ブロックの各団体との訓練士や会員の交流会なども積極的に進めたいと考えております。

 一方、コロナ感染症の影響が徐々に収まりつつあるとはいえ、会員数の減少という課題には引き続き検討する必要はあります。会員の高齢化、会員の減少傾向、手術の向上化による再建者の増加、シャント術の向上によるシャント発声者の増加も考えられます。こうした時期だからこそ先輩方の「声を失った喉摘者が声を取り戻し、気後れすることなく社会復帰をしてほしい」と願った熱い熱い思いが蘇ります。これまで数万に上る喉摘者が銀鈴会のような団体に恩恵を受けてきたはずです。同じ病気に同じ悩みを経験してきた訓練士による発声訓練だからこそ共感し、信頼され、成果を上げてくることができたのです。そのため、会費の納入をはじめ、賛助会員の皆さまのご支援がますます重要となってきております。会員の皆さま、賛助会員の皆さまには特段のご負担をおかけいたしますが、なお一層のご支援、ご協力を賜りますよう伏してお願い申し上げます。

そして、まだまだ低い銀鈴会の認知度を高めるために、新たな会員の入会を促すよう、病院をはじめとする医療機関や行政への周知を積極的に取り組むなど、広報活動を積極的に進めてまいります。社会復帰しやすい環境づくりのためにも、医療・行政との連携が重要であると考えております。さらに新しい機器の研究協力や導入、新しい仲間やほかの障害者団体との連携、行政機関や医療関係者との支援体制を強めてまいります。

 2025年の干支は乙巳(きのとみ)。「乙(草木がしなやかに成長していく意味)」と「巳(脱皮を繰り返す不老不死の象徴)」から「再生や変化を繰り返しつつ、伸びやかに発展していく」年になるとも言われています。こうした思いを胸に本年度も銀鈴会は「声を失った仲間の支えとなる」公益団体という創立当初からの理念を守りながら、オンライン訓練の定例化やホームページやSNSなどを活用するなど新しい時代に適応した活動を進めてまいります。

 

本年も会員の皆さま方の変わらぬご支援とご協力を賜りながら、銀鈴会の次の10年に向かって共に頑張っていきたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。