第10回全国喉摘者発声大会講評    廣瀬 肇 先生


 

     日喉連顧問・銀鈴会常任顧問        廣瀬 肇


  出場された方は大変ご苦労様でした。また入賞された方は大変おめでとうございました。審査員の方はお疲れ様でした。


出場者について簡単にご説明いたします。ELは8名の出場者、50代1名、70代4名、60代3名の計8名が参加されましたが、その内5名が食道再建の方でした。また、入会して2年未満の方は3名おられました。その内の2名が3位以内に入賞されました。一方食道発声につきましては、16名の出場がありました。男性が14名、女性が2名でした。
これらの方々の中で16名中6名がいわゆる食道再建です。空腸移植が4名で皮膚移植が2名でした。また、年齢分布はやはり50代3名のうち2名が3位以内に入賞しています。また、70代が5名、60代が8名の参加でした。入会後の経過年数ですが、3年未満の方は4名います。以上が参加者の大体のご紹介です。


講評に入ります。
ELについては、我々がELを使われる方に何時も申し上げることですが、一番注意しておくことは、3点ございます。1番目は、音漏れがないかです。これはあてる場所から浮かせたりしますと希に音漏れがおきますが、今日は一人もおりませんでした。2番目は、オン、オフによる音の切れ目を上手く使えるかどうかです。オンの状態が続くと語尾が伸びてしまい不自然に聞こえてしまいますが、今日の参加者にはそういう方はおりませんでした。もう1点は少しやっかいなことですが、口の中のメリハリが悪くなるために、鼻に音が漏れる傾向が一寸見られた方がいました。口の中から音を出さないということが必要で、いわゆる軟口蓋、鼻と喉との境がちょっと緩くなって鼻に漏れてしまうということがあります。この3つを注意していただきたいと考えています。
もう1つは、どうしてもELは押さえていればいくらでも音が出るものですから、少しお話が長くなって時間が超過する方が何名かおられました。また、どうしても早口になってしまう傾向にあります。早口をできるだけ避けることは、食道発声でも言えることです。3位になった金原さんは胃吊上げをしています。この方はポリマーをやっていらっしゃるとのことで、ご主人と一緒にペットショップをやっていらっしゃることで、景気がよろしいとのことでした。ELを大変、上手に使っていたと思います。料理が苦手なようですが、皆さんは沢山召し上がってくださっているようで大変結構なことだと思います。入会して2年未満とのことですが、大変お上手だと思います。2位の辻村さんも入会1年未満ですが、ご自分の家に埋蔵金が3万円あるというお話でした。埋蔵金が出てくれば我々の年金が増えるとの面白いお話でした。1位の簗さんは空腸移植の方ですが、今までの方と比べて大変ベテランで22年以上ELを使っていらっしゃるとのことです。ちょっと早口でしたが、カラオケであるとか研修旅行とかで会員の方と大変楽しく過ごされているとのお話でした。ELのオン、オフが非常に綺麗な使い方で感心いたしました。
食道発声につきましては、やはり空気の取り入れが重要なことは言うまでもありませんが、注入の時に口が動いてしまう方がおられました。この癖は練習によって減っていくものと思います。
食道発声の皆さんで早口になる方がおられまして、発表会での評価は不利でございますので、一言ずつ、フレーズ毎にしっかり発音することが大切だと思います。3位の千田さんは、空腸移植の方ですが、この方は珍しく首の周りを押さえることなく発声していました。経験8年余りですが、非常に上手かったと思います。元々健康だったとのことで岩手の国体に参加されたとのお話でしたが、色々楽しく過ごされているとのことでした。2位の加藤さんは入会2年ちょっとですが、大変お上手でございまして、この方はバスのドライバーをされていますが、お客様にご説明される立場で見事に職場復帰されたお話で大変素晴らしいことと思っています。1位の斉藤さんも入会して2年半ですが、インターネットで銀鈴会のことを調べて入会されたとのお話でした。職場ではメールなどを使いながらコミュニケーションを取りながら食道発声を習得されたとのことで、見事に優勝されました。既に職場復帰を果たされております。このように皆様努力をされて今日に至っていることを改めて感服したと共に今後とも皆様方のご発展とご健勝を祈念して講評といたします。
本日は皆様ご苦労様でした。