喉頭に隣接する下咽頭・食道入口部付近の癌に対する手術で喉頭を摘出せざるを得ない場合があります。
このような手術は咽・喉頭食道摘出手術(咽喉食摘)と呼ばれます。
この手術では、気管孔を作る他に食事が通る路を造る必要があります。これを食道再建と呼びます。
食道再建には、次の手術方法や複数の方法を組み合わせる場合もあります。
1.最初から管構造として、本人の空腸(小腸の胃に近い方)を移植する手術。
2.胃にメスを入れ管状にした後、咽頭につなぐ「胃の吊上げ」手術。
3.肩や背中の皮膚から皮膚管をつくる「皮弁形成」手術。
この手術を受けた患者さんへ主治医から。食事摂取直後は逆流を防ぐために下を向かないようになどの注意があります。
下咽頭がんや頸部食道がんなどで喉頭摘出と共に食道の一部を失い、食道再建手術を受けて入会する方の割合が年々増加しています。食道再建手術の方法は、空腸移植、胃管吊上げ、皮膚管移植(胸皮、腕皮、広背筋)の3つの方法があります。
空腸移植
・約30 cmの空腸(小腸)を切除し、実際に使用する部分は10 cmぐらいです。(左図)
・下咽頭や頸部食道の悪い所を摘出後の欠損部に、採取した空腸の上下を縫い合わせます。血管の吻合も行われます。(右図)
胃吊り上げ
・胃を左図のように切除して、充分に吊り上げ出来るように細い胃管を作ります。
・病気の範囲の広い時、食道を全部抜き取って、取り除きます。(中央図)
・作成した胃管を上方に吊り上げて、咽頭部に縫い付けます。
皮膚管移植(大胸筋)
・右側の大胸筋で、図のような皮膚管を作ります。
・皮膚管を、病巣のあった下咽頭、頸部食道部を切除したあとの欠損部に縫い付けます。
・切開して持ち上げていた皮膚弁を元の位置に戻して、再建食道をおおいます。
図と説明文:「食道発声指導の手ほどき」 高藤次夫 著 より
食道の入口部、括約筋を摘出しているため、単純喉摘者が新声門とする食道入口部の狭い部分がありません。また、頸部を押さえないと声が出にくく、効率よく振動して声を出すことが難しいという難点があります。そのため、発声時に頸部を指で押えて狭い部分を作り、振動部を作る必要があります。
食道への空気の取込み状況は、食道入口部の広さにもよりますが、再建部に縫合された咽頭部の状態が大きく影響するようです。以前は、食道発声は困難とされていましたが、最近では頸部を手で押さえて発声することで単純喉摘者と大差ない割合で食道発声を修得しているという調査結果が出ています。